BtoB広告の改善は、問い合わせ単価を下げることから始めるとは限りません。誰の、どんな相談を獲得し、それがどの受注につながったか。そのつながりを確認してから、予算と施策を判断します。
1. まず「成果」の定義を、営業とそろえる。
広告管理画面では成果が出ているのに、営業からは「良い問い合わせが来ない」と言われる。そんなとき、配信やクリエイティブだけを調整しても、問題が解消しないことがあります。広告と営業が、違うものを成果と呼んでいるからです。
資料請求、相談予約、見積もり依頼は、それぞれ検討の深さが異なります。すべてを同じコンバージョンとして合算すると、獲得件数が増えた理由を判断しにくくなります。まず、以下の段階と判定基準を共有してください。
| 段階 | 確認すること |
|---|---|
| 問い合わせ | 資料が欲しいだけか、具体的な相談があるか。営業・採用目的など対象外の連絡を分ける。 |
| 有効な商談 | 自社が支援できる課題・対象・条件か。営業と共通の判定基準を持つ。 |
| 受注 | どの相談が契約につながったか。受注までの期間と失注理由も確認する。 |
| 収益への貢献 | 提供原価と獲得費用を差し引いた利益を確認して判断する。 |
基準は細かすぎなくて構いません。「自社の対象顧客で、解決したい課題が確認でき、次の提案に進める」など、担当者が同じように判定できる状態を先につくります。
2. CPAではなく、受注と粗利までつなげて見る。
CPAは、広告費などの対象費用を、設定した成果件数で割った数字です。何を成果とするかで意味が変わります。資料請求CPAが安くても、商談化や受注につながらなければ、そのまま増額する根拠にはなりません。
以下は考え方を示す架空の比較です。両施策とも対象期間の獲得費用を60万円、受注1件当たりの粗利を30万円とし、十分に営業期間を経た同じ条件の顧客群を比較します。
| 指標 | 施策A | 施策B |
|---|---|---|
| 獲得費用 | 60万円 | 60万円 |
| 問い合わせ | 60件 | 20件 |
| 問い合わせCPA | 1万円 | 3万円 |
| 有効な商談 | 10件 | 10件 |
| 受注 | 1件 | 3件 |
| 受注1件の獲得費用 | 60万円 | 20万円 |
| 受注による粗利の合計 | 30万円 | 90万円 |
| 粗利 − 獲得費用 | −30万円 | +30万円 |
説明用の仮定です。実在の支援事例・実績ではありません。最後の行は、会社全体の利益を表すものではなく、その他の販売費・管理費等は考慮していません。
粗利とは、ここでは受注金額から、商品・サービスを提供するための原価を引いた金額です。たとえば受注金額100万円、仕入れや制作の原価が70万円なら、粗利は30万円です。自社で何を原価に含めるかは、経理・管理部門とそろえてください。
例ではCPAだけならAが優れて見えますが、受注と粗利まで見ると判断が変わります。ただし、件数の少ない短期間の結果だけで優劣を断定せず、案件の違いや偶然の影響も確認します。
3. 使える予算と、使う合理性がある予算を分ける。
予算の上限があることと、その全額を投じるべきことは別です。まず、1件の新規受注を得るために、どこまで費用をかけられるかを考えます。
獲得費用の上限の目安
= 評価期間内に見込める粗利
− その他の費用と、残したい利益
継続契約がある事業なら、最初の受注だけでなく一定期間の継続粗利も検討材料になります。ただし、希望的な継続率や未確定の追加受注を前提にすると、許容できる費用を過大に見積もります。実績のある期間・継続率を使い、回収までの資金負担も確認します。
また、媒体費だけでなく、運用手数料、制作費、計測環境の整備費なども整理します。複数月使うサイトや動画の費用は、どの期間・施策に配分して判断するかを先に決めます。
- 増額を検討する:受注と採算の傾向が見え、対応できる営業・提供体制があり、追加投資で何を検証するかが明確な場合。
- 現状の予算で改善する:訴求や導線、営業への引き継ぎに改善余地があり、まず効率を確かめたい場合。
- 投資を抑える・保留する:十分な検証期間を確保できない、回収までの資金負担が重い、顧客や提供価値の前提が定まっていない場合。
過去の効率のまま広告費を増やせるとは限りません。増額は段階を区切り、どの指標が変われば継続・修正・停止するかを決めておくと、判断しやすくなります。
4. 広告から受注までの時間差を織り込む。
BtoBでは、問い合わせをした月と契約した月が違うことがあります。「今月の広告費」と「今月の受注」だけを比較すると、今月の広告が生んだ成果と、過去の接点が生んだ成果を混同する可能性があります。
問い合わせが発生した月や施策ごとに顧客群を分け、その後の商談・受注を追います。検討期間が長い商材では、受注が確定するまで有効商談や提案への進捗を見つつ、後から受注結果で評価を更新します。
必要な記録は、最初から複雑である必要はありません。流入元、問い合わせ日、相談内容、商談の判定、提案・受注・失注の結果をそろえることから始めます。広告だけでなく、紹介や展示会など複数の接点が関わる場合は、広告だけの効果と断定しないことも大切です。
Google 広告には、営業活動などを経て発生したオフラインの成果を取り込む仕組みがあります。利用条件やデータの取り扱いを確認したうえで、営業側の成果を広告評価へ戻す選択肢として検討できます。Googleの公式ドキュメント →
5. 改善する場所を、顧客の行動から特定する。
採算の見方がそろったら、成果を妨げている場所を探します。CPAが高いという結果だけで、媒体や運用担当者を変える必要があるとは限りません。
- 接触:支援したい企業・担当者に届いているか。広すぎる対象や、異なるニーズを一括りにしていないか。
- 関心:顧客の課題に結び付く言葉になっているか。自社の機能説明だけで終わっていないか。
- 比較:他の選択肢と比べて選ぶ理由と、信じられる根拠があるか。
- 相談:相談できる内容、費用の目安、次の流れが分かるか。フォームの負担が大きすぎないか。
- 商談:広告・サイトで生まれた期待と、営業の説明や提供内容がつながっているか。
失注理由や商談で聞かれた質問を、広告・動画・サイトの改善に戻します。運用と制作を個別に最適化するだけでなく、顧客が意思決定する流れを見渡すことで、次に変えるべき点を絞りやすくなります。
発注する前に、社内でそろえたい5項目
- 増やしたい顧客と、引き受けない相談の条件。
- 有効商談と受注の判定基準。
- 受注1件の粗利と、回収を待てる期間。
- 媒体費・制作費・運用費を含む予算の範囲。
- 営業結果を共有する担当者と、振り返りの頻度。
ここが曖昧なら、広告を追加発注する前に診断やコンサルティングで整理するほうが、予算を有効に使える場合があります。前提がそろっているなら、必要な制作・運用へ具体的に進めます。
よくある質問
CPAが高い広告は、すぐに止めるべきですか?
問い合わせの質、商談化、受注、粗利、営業期間を確認してから判断します。ただし、獲得費用や資金面の上限を超えている場合は、検証を続ける範囲も含めて早めに見直します。
受注データが少ない場合は、何を見ればよいですか?
有効商談や提案への進捗など、受注に近い段階の情報を確認します。少数の結果を将来の確約として扱わず、商談内容や失注理由と併せて仮説を立てます。
制作会社や広告代理店を変える必要がありますか?
最初から変更を前提にする必要はありません。現在の体制で課題を共有し、評価指標や役割をそろえる方法もあります。カーネマンは既存の社内・外部体制と連携する監修・コンサルティングにも対応します。
